麗人の憂鬱。
- 2008/12/17(水) 16:59
「クラシック界のオスカル様」、「男装の麗人」などと形容され、熱狂的なファンも多い指揮者、西本智実さん。
日本とロシアでの10年にわたる音楽修行の後、28歳でデビュー。日本人指揮者の数自体が少ない上に、女性、そして留学生ということで、ロシアの音楽院ではかなり苦労されたようで、気迫みなぎるレッスンの様子を見たロシア人学生たちは西本さんを「サムライ」と呼んでいたそうです。

でも西本さんの演奏会を聴きに行ったり、ライブDVDを見たりすると、西本さんはオケに対して肩身が狭いだろうなあ…と思ってしまいます。
西本さんの演奏会では、どうやら西本さん目当てと思われるおばさまたちが、楽曲の最後の「ジャーン」とか「ジャジャジャン」とかいう音の余韻が終わっていないうちから「ぶらぼーーーっっ!!」(そして爆竹のような拍手)とやるのです。私が今まで行った西本さんの演奏会ではすべてそうでした。
このような前のめりのブラボーを通称「フライングブラボー(フラブラ)」というのですけど、演奏者が顔を見合わせて肩をすくめたりするのを見ると、何だかいたたまれない気持ちになります。
また、ライブのDVDではこれでもかというぐらい西本さんばかりが映っていて、演奏者は二の次。まるで西本さんのプロモーションビデオみたいです。
オケやブラスのライブ映像を撮るときは、楽曲のここのフレーズに来たら3番カメラがフルートの1番奏者を映す、というような細かい割付が決められているのですが、西本さんのDVDは事前打合せをしてないんじゃないかと思うぐらいカメラワークが適当。この見せ場でホルンを映さなくてどうするの!というところでチマチマとリズムを刻むバイオリンが映ったり、演奏者は西本さんを映した後のおまけみたいなひどい扱いです。
オーケストラには指揮者よりもキャリアが何十年も上という演奏者も多いので、若い指揮者はただでさえ肩身が狭いものです。ウィーンフィルが若き日のカラヤンに対して、楽曲を実際のテンポの半分の速さで演奏するという嫌がらせを本番で(!)やったエピソードなどはけっこう有名。
なので、今のような状況では西本さんへの風当たりは必然的に強くなるんじゃないでしょうか。西本さんが自分の人気に対する感想を問われると「(楽曲研究で)それどころじゃない!という感じです」と答えているのはそのせいもあるのかなと思います。
指揮者とオケの関係は馬場馬術の騎手と馬の関係に似たところがあって、与えられた課題をどれだけ正確に・美しくこなすかというところに共通点があるんですけど、技術よりもお互いの信頼関係が大事なんですよね。カラヤンは楽曲の流れをオケに委ねる「おまかせ型」、西本さんはキチキチと制御する「コントロール型」ですが、オケが西本さんに対して「思い通りにはさせないもんね」と頑固になっている場面が時々見受けられます。障害物の手前で急ブレーキをかけて騎手を前方に飛ばす馬みたいに。
西本さんにそういう苦難が多ければ多いほど「そんなところがオスカル様みたいでステキ!」というファンが増えるんでしょうかね。
でも、Wikipediaの解説によると西本さんは
「テレビ番組『題名のない音楽会』でオスカルのコスプレをした一件について、後に本意ではなかったことを明かしている(このとき舞台の袖で落ち込む西本を励まし、元気づけていたのが故・羽田健太郎)。」
ということらしいので、もうオスカル様という呼び名は封印してあげてください。
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